贖罪からの実演

 薬の調合というものは、本来それを使う者に合わせて調合される。故に調合者は対象者のことをよく知る必要がある。診察したりカルテを見たりして。むろん市販の薬だったり、対象者が幅広い場合はこの限りではないが……少なくともこの薬は、特定の個人専用に調合された薬だ。
「へぇ、こんなにちっちゃいんだ」
 小さな小瓶……醤油を満たし弁当箱の中へ入れてもおかしくなさそうなほど小さな小瓶を指でつまみながら、マジマジとそれを眺めている。
「これが「気持ち良くなれるお薬」なんだね」
 まあ……その通りだが、その言い方ではかなり誤解されそうだな。
 この薬は、性感感度向上薬。あらゆる触覚が過敏になり、性的興奮に変換される……要するに性感帯が過敏になるという代物。作成者曰く、「かっ、身体中がみんなオマンコみたいになっちゃうぅ!」だとか……どこから突っ込んで良いのやら……。
 だが全く的外れな比喩でもない。いや、言い方が違うだけで目的は寸分違わず「そこ」なんだ。
「まあなんていうか……全身の感度が平均的に向上するのではなく、弱いところは強く、元々強い部分はさして向上しないようバランスを取るようにしたつもりだよ」
 まるで俺が調合してきたかのように説明する……というか、彼女には俺が調合したと言っている。それが、この薬の開発者……魔女キルケーの頼みだったから。
 彼女は自らを被験者にして、その調整を繰り返し……って、俺も付き合わされたが……そこまでして完成させた薬なのだが、これを直接渡すことはおろか、開発をしたことも相手に伏せて欲しい……そう願った。だから俺が替わって手渡し、そして俺が作ったと嘘をついている。
「へぇ……なんかすっごく都合の良い薬だね」
 まぁな……正直俺もそう思う。だがそれを可能にしてしまえるだけの力が、彼女達にはあるからなぁ。俺には……まだ無い。伝統的な薬草の調合などはようやく覚えたが、自らアレンジしたり開発したりは流石に無理だ。自分の技術では手に余る代物を、自分が作ったと言うのは……正直、気が引ける。
「なんかさ、どっかのエロ漫画とかエロ小説みたいだね」
 ……発想があいつらと同じかよ……俺もそう思ったけどさ……
「ま、いっか。じゃあ早速、試してみようよ」
 そう言いながら、彼女はいそいそと服を脱ぎだした。
「あれ? 脱ぐんだ……」
 これからすることを考えれば、服を脱ぐことは当然。だが自他共に認めるコスプレマニアの彼女は、何らかの衣装を身にまとい、その衣装に合わせたシチュエーションで夜を楽しむのが常だった。なのに今日に限って服を脱ぐので、俺は思わず尋ねてしまった。
「うん、だって私も……あっ、ほら、薬の効果を試すなら、全裸の方が良いじゃない?」
 まあそうだが……変なところに引っかかるものを感じたが、それを追求しても始まらない。
 さっさと服を脱いだ彼女はまだ脱ぎ終えていない俺を待ちながら、例の薬を飲み干した。まあ彼女は普段から上半身しか服を着ていないからな。下半身は裸……というか、服を着られないから。
「ねえ、これって飲んでからどれくらいで効果が出てくるの?」
「んー……5分くらいかな? ちょっと効率悪いんだけどねぇ」
 制作者曰く、一番効率が良いのは口から飲むより直接膣の中に注入する方が良いそうだが……彼女の場合、それが出来ない。なぜならば……彼女には膣がないから。
 下半身を6匹の蛇と12本の蛸脚にされてしまった彼女……スキュラは、その変化と同時に下半身にあった女性器をも失うことになった。その為彼女は男性と交わることも、ましてや子を宿すことも出来ない身体になってしまった。だが「欲情」という感情までなくなったわけではなく……それを上半身のみで沈めていた。結果として彼女は人よりも胸や口内などの性感帯が過敏になったり、また攻められるよりは攻める側になって愉しむようになっていった。
 そんな彼女に、少しでも受ける側……女としての悦びを味わって欲しい、というのがこの薬を作った者の意図……の、はずだ。むろんそんなことを一度たりとも口にしたことはないし、これから先することもないが……。
「ねえ、この薬って……「この子達」にも効果があるの?」
「そのはずだ……最近じゃ暴走もほとんど無いみたいだし、問題ないはず」
 この子達……下半身の蛇たちは、鎌首をあげシューシューと息を漏らし舌をチロチロさせている。まだ彼女が暗い洞窟の奥に一人でいたときは、その蛇たちが勝手に動き出し、近くを航行する船を襲ったりもしたが……屋敷の近くに移り住むようになってからは、彼女のコントロールから外れることはほとんど無くなっている。それだけシンクロがしっかりしていれば、身体は繋がっているわけだし薬の効果は確実にある……とは、開発者の弁。付け加えるなら、この薬を使うことでシンクロはより進み、無意識に人を襲ったりしなくなるはずだとも、言っていた。
 これはある意味、かなり遠回しな「治療」でもあるんだが……流石にそこまでは、スキュラに伝えていない。伝えても問題なさそうだが……いや、こればかりは何とも言えないな。
 薬の制作者キルケーは、スキュラの下半身をバケモノにした張本人だからな。
「そろそろかな……触るよ?」
「うん……えへへ、なんかちょっと怖いような……楽しみなような……」
 いつでも明るいな……そんな彼女の性格に、何度救われたか。初めて会った時には、まさかこんな……っと、昔を懐かしんでいる場合じゃないな。
「んっ! すごい……ちょっと触られただけでこんな……電気がビリッて走ったみたいに感じちゃう……」
 薬は効いているみたいだな……さてここからだな。効き過ぎていたりしなければいいが……
「んっ……ふあ、ん……肩、撫でられるだけで……こんな、んっ……すごい、気持ちいいよ……」
 両手で肩をマッサージするように、軽く撫で回してみたが……感度としてはちょうど良い具合か?
「脚の方はどうかな……」
「お願い……んっ! こっちも感じる……すごい、こんなに気持ち良くなれるなんて……」
 試しに蛇の頭も撫でてみた……一瞬驚いたようだが、すぐに馴染み……目を細めて気持ちよさそうにしている。ふむ……こうしてると可愛いんだがな蛇も。
「ね……キス、してみて……」
 頬を高揚させ、まるで子犬のように舌を出しながらお強請りするスキュラ。それに応えるべく、俺はスキュラの首に手を回し、そっと抱き寄せ……唇を重ねる。
「んっ! ん……チュ……ふあ、ん……クチュ、クチャ……ん、んふぅ! ん、しゅ、んはぁ、すごい……今、キスだけで逝っちゃった……えへへ」
 はにかむ彼女が可愛らしくて……俺はまたすぐに、はにかむその唇に吸い付いてしまう。
「んん、ん……クチュ、チュ……ふあ、ん、いっ、クチュ……ふえ、んっ、はむ、ん……」
 彼女も俺の首に手を回し、二人して激しく求め合う。悶えているのか、彼女は俺の後頭部を掻きむしるように荒々しく掴んでいる。
「んっ!」
 キスをしながら、俺は軽くうめいてしまった。彼女からの「攻め」が始まったから。
 無数の脚が俺を抱きしめ、背中に脚の吸盤が張り付く。その吸盤がペタリペタリとくっついては離れ、全身を愛撫してくる。
「すご、私、攻めてるのに……きもち、いい……なにこれ、ずこい、んっ、キス、キスも……ふあ、クチュ、チュ……チュ、チュ……チュパ、ふぁあ、すご、すご、い……ふぁあ!」
 今背中や尻、太股など……俺の全身は吸盤のキスマークだらけだろう。何度も何度も繰り返し、互いに奇妙な性感に酔いしれる。
 だがこればかりで終えるような彼女ではない。
 するりと、尻の間に足先が進入してくる……ツンツンと、俺の菊門を彼女が突きだした。
「ここ、入れて擦ったら……私、どうなっちゃうんだろう……」
 だらしなく涎を垂らしながら、惚けた彼女が期待の目で俺を見る。
「いや、あのさ……いきなりは勘弁してくれ」
 あまりそっちは慣れてない……彼女相手でなければ、舐めて貰うことはあっても入れられることはないからなぁ……。
「くすっ。判ってるって……ん、ふぁ、脚、擦るだけで……んっ、ひぁあ! すっごぉい……感じてるぅ」
 滑った脚を尻に挟み入れ、菊門を湿らせるために動かしているのだが、これだけで彼女の脚は感じてしまっているようだ。
「へん、なんか、へん……すごい、なにこれ、きもちいい……ね、ね、パイズリされると、こんなかんじ、なのかな?」
 どうだろう……今君が感じている性感がどんなものだかちょっと想像しがたいんだが……同じようなものかも知れない……かな?
「ね、オッパイ、オッパイぃ……こっち、吸って、ね、吸って……んっ! しゅご、しゅごひぃ……ふあ、いってりゅ、いってりゅぅ……」
 ろれつが回らなくなるほど感じているようだ……先ほどからずっと、身体を小刻みに震わせっぱなしのようだからな。
「わらひも、ちゃんと……ふあ! これ、い、しゅご……ふあ、ん、んんっ!」
 既にガチガチになっていた俺の肉棒に、彼女の脚が絡みついてきた。吸盤の吸い付きと、脚の締め付けがまた絶妙な……しかも、蛇が俺の鈴口をチロチロと舐めてくる。いやそれだけじゃない。他の蛇も俺の肉棒……亀頭からカリから、くまなく嘗め回している。更に……菊門まで蛇の舌がチロチロと俺をくすぐりやがる。
「した、したいっぱい、かんじるぅ! ひあ、おい、おいひい、キスも、オチンチンも、おいひ、おいひいのぉ!」
 我慢できずに、俺はいつの間にか腰を動かしていた。彼女の頭部もかなり強く抱き寄せている。むさぼるように彼女の舌を味わい、獣のように腰を動かす。
「ふぐっ!」
 そんな激しい腰に構うことなく、とうとう俺の尻に彼女の脚が進入してきた。なんというか、男としてここを攻められるのは気恥ずかしく……だが妙な快楽があるのもまた事実。
「ひあ、も、もう……しゅごしゅぎ、もう、いは、いい、あ、あしまんこ、あしちんぽ、あしまんこいい、あしちんぽ、しゅごいの、い、きも、きもち、いい、いい、ひあ、ん、ふぁあ!」
 怒濤の攻めに、俺はいつの間にか射精していたようだ……俺は薬を服用していないのに、全身が痺れたようになっている……どうやら俺が果てるとほぼ同時に、彼女も今までの中で一番の「波」が全身を覆ったようで……脚の動きは止まり、しかし痙攣したように身体を震わせていた。
「ふぁあ……すごい……あは、こんなにかけられちゃったのね……ん、クチュ……」
 蛇や脚にかかった俺の精液を、彼女は美味しそうに舐めている。
「クチュ……ん、じ、自分で舐めても……感じちゃう……これじゃ、オナニーしてる、みたい……」
 その言葉を聞き……俺は思わず口元をゆるめ、妙なことを口走る。
「ねえ……見せてよ、スキュラのオナニー」
「ふえ?……ん、いいよ。ふふ、ホント、変態さんなんだからぁ」
 膣も陰核もない彼女が、普段どうやってオナニーしているのか……ちょっと興味がある。そんな好奇心が変態チックなお強請りをしてしまった。
「普段こんなことしないんだけどね……んっ! これ、ちょっ……くせに、なっちゃうかも……」
 脚で自分の胸を揉み、乳首は蛇に舐めさせる。そして自分の手で脚をしごき、唇は蛇の鎌首当たりを甘噛みし、舌はその鎌首を嘗め回している。
「ん、クチュ、チュル……ん、ふぁ、んっ! こ、じぶんで、こんな、きもち、よく、なれる、なんてぇ、ん、きも、ち、ふぁあ! ダメ、よすぎ、る……んぁあ!」
 凄い光景だな……全身の性感が高まっているからこそ出来る、ある種究極のオナニーとでも言うべきか……
「ね、ダメ……せ、せつない、よ、いや、やっぱり、ひとりは、イヤ……さみしい、よぉ」
 官能的なシーンだが……彼女を切なくさせては意味がないな。普段明るく振る舞っているが、結構寂しがり屋だからな……
「ね、ここ、ここで、して、させて、おっ、オッパイまんこ、むねまんこぉ!」
 切ないながらもオナニーで気分が高揚しているからか、隠語を何度も口走っている。
「なんか……薬のせい? 今日はやけにエロいね」
「だって、だってぇ……きもち、いいし、ね、いれて、わたしの、まんこ、おまんこぉ、ここ、おまんこにしてぇ!」
 普段は着ているコスチュームに合わせて、多少演技の入った口調だったりで愉しんでいる彼女なのだが……今日は何も着ていないからなのか、やはり薬のせいなのか……すごくエロいな。そもそも、彼女が「まんこ」なんて単語を口にしたのは……当たり前だが、初めて聞いたし。
 俺は彼女の脚に持ち上げられながら、腰を彼女の胸に近づる。彼女は手と脚で胸を両脇から挟み、谷間を作り出す。俺はその谷間に、肉棒を押し入れた。
「んっ!……ふあ、すごい……入れられただけで……ちょっと逝っちゃった……」
 えへへとはにかみながらいやらしい報告をするスキュラ。ああもう、可愛いなぁ……そう思ったからか、我慢できない俺の本能が腰を勝手に動かしていた。
「すっ、ん! い、しゅご、んぁあ! これぇ、おっぱいまんこ、しょご、い、きも、きも、ち、よしゅ、ぎっ! んっ、いあ、ふぁあ! い、いい、きもひ、よしゅぎて……ん、ふぁあ!」
 トロンと目尻を下げ惚けた顔で俺を見上げながら、彼女はろれつが回らないながらも声高に喘ぐ。
「ひあ、あひ、あひちんぽ、らめ、こしゅ、こしゅっちゃ、い、きも、きもひ、よひゅぎ……ふあ、まんこ、おっぱい、まんこ、まんこ、わら、わらひ、まんこ、まんこ、いい、まんこ、まんこきもち、い、いい、いい、いいっ!」
 隠語を連発しながら、彼女は全身で感じている……完全に受け身状態の快楽。俺を攻めることも忘れ、快楽に包まれている。
 俺はといえば……身体を脚でロールされているだけとはいえ、これがまた心地好く、吸盤の吸い付きも妙な快感になっている。何より、胸の程良い弾力と圧迫に肉棒が包まれ擦られ……そろそろ、限界が近づいている。
「ひあ、いく、まんこ、おっぱいまんこで、いく、わら、わらひ、いく、まんこ、まんこ、まんこ、まんこで、いっ、あぁ! まん……ひっ、ふぁあ! いっ、いく、いく、いく、いく、いく、いっ……んぁああ!」
 半開きの口に、勢い良く噴き出す精液。真っ正面からそれを受け止めながら、彼女は半ば失神したように逝った……ようだ。
 ゆっくりと脚の力が抜け、俺をどうにか下ろしたと同時に、ふにゃりとまさに蛸のようにへたり込む彼女。
「大丈夫か?」
「うん……えへへ、気持ち良かったぁ……これが女の悦び……なんだね」
 まあ、それに関して俺は男なんで何とも言い難いが……ともかく、悦んでくれて良かった。
「ね……お願い、ちょっと抱きしめてくれる?」
「ん? まぁいいけど……」
 俺は彼女に近づき、言われたとおりギュッと彼女を抱きしめてやる。
「えへへ……やっぱり、こうしてもらうのも女の悦びだよね……」
 俺に抱きつき返しながら、耳元で囁くように言った。まあなんだ……そう言われるのが、男の悦びでもあるな……。
「えへ、大好き……ありがとう」
「ああ……俺も好きだよ」
 相変わらず誰にでも言う台詞……でも、説得力無くても俺の変わらない気持ちなんだがなこれが……。
「ふふ……キルケーちゃんにも、後でお礼言わないとね……」
「……気付いてたのか」
 どこで気付いた? その問いかけをする前に、彼女の方から「からくり」が暴露される。
「イタズラ好きなのにお節介な二人がね……内緒だよって、教えてくれたの」
 イタズラ好きでお節介……ああ、なるほどそういうことか。
 今回の薬のことを知っているのは、俺とキルケー、残るは……その二人だけだ。
 魔女。三人の魔女の内、キルケーを除いた二人だ。なるほどね……まあ彼女達も、仲間のキルケーとスキュラのことはずっと気にかけていたようだったからなぁ
「……こんな姿にさせられて、ずっと洞窟にいて……あの頃はずっと、恨んでたよ。毎日泣いてた。でも……」
 抱擁を解き、じっと俺の顔を見つめながら続ける。
「あなたがここに、私の居場所を作ってくれた……光あるこの場所に……だからもう、いいの」
 ……真っ直ぐな瞳には、曇りがない。元々嘘をつけるような性格じゃないからな……これが本心、なんだろう。
「今ではこうして、毎日が楽しいし、アルケニーちゃんやメデューサちゃん、エムプーサちゃんも、いっぱいお友達が出来たし、なにより……」
 不意に、俺の頬に暖かい感触。
「好きな人が……出来た。その人に、いっぱい、いっぱい、感じさせて貰って……私、幸せだよ」
 ……いやもう、照れます。何も言えず、唇の感触が残る頬を指で掻くくらいしか、反応できない自分が情け無い。
「もうこの身体にも慣れたし、この子達も暴れないし、なにより、こうしてあなたと出会えたのも……キルケーちゃんのおかげだって思えば、もう恨めないよ」
 ホントに良い娘だねスキュラは……まあ、これでキルケーの贖罪も……すんだのかな。
 魔女として、やったことを後悔したり反省したりすることはない。そう公言していたキルケーだったが……気にはなっていたんだろうな。だが彼女にも魔女としてのプライドがあるから、直接謝罪なんて当然しないし、彼女を「直接」治そうなんてことも考えなかった。そもそも、スキュラはあの身体でいた時期が長すぎて元にはもう戻せなくなっていたしな……。
 そこでキルケーは、間接的に彼女のサポートをしようと考え、薬の開発に没頭し始めた……のだと、思う。これは俺と、そして「イタズラ好きでお節介な二人」の推測だが。あの手の薬、今回のだけでなくだいぶ作ってきたからなぁ……ま、趣味もかなぁりかねてはいたんだろうが。そう考えると、キルケーらしい贖罪だったな。
「でも……ちょっと妬けちゃった」
 ん? 妬けたって……なにに?
「キルケーちゃんズルイよねぇ。あーんなに美人なんだもん……すっごいデレデレしてたね。キルケーちゃんも幸せそうな顔しちゃってさぁ……悔しいから、私も今日は「素の私」でして欲しかったんだ」
「……ちょっと待て、なんでお前が……」
「だから言ったじゃない。「イタズラ好きで」でもお節介な二人が教えてくれたって」
 ……あっ、あいつらぁ!
 なにか? あれを……見たんだな? スキュラだけでなく、残った魔女二人も……俺はへなへなと力なく、しゃがみ込んでしまった。
「あはは、ごめぇん。これも秘密って言われてたんだっけ」
 いや、もういいです……そうだよねぇ、じっと黙って一大事に供える二人じゃないよねぇ……そういや、あの二人はもちろん、スキュラもキルケーの素顔は知ってたから見ても問題ない……ってことになるかぁ!
「あっ、あのね……実は今も……」
「魔女ども!きさま!見ているなッ!」
 とりあえず虚空に向かって叫んでみる……ったくあいつらときたら……今頃、腹を抱えて笑ってやがるな……返せ、俺のプライベートを返せコンチクショウ……
「いいじゃない。見せつけてやろうよ、特にキルケーちゃんにさ。ふふ」
 ギュッと俺に抱きついて、スキュラが虚空に向かい宣言する。
「これでお互い、恨みっこ無しね。でももう、横恋慕は無しよ!」
 ……焚き付けないでよ、頼むから。
「へへ、んー、幸せぇ」
 ……まあ、仕方ないか……彼女の笑顔を見るとなんでも許せてしまうから困る……。
「なんなら、今度はキルケーちゃん混ぜて三人でする?」
 それは……無理だろ……と思いつつ、ちらりとそんな光景を思い浮かべてしまうスケベな俺でゴメンナサイ。
「とりあえず……ね、薬は切れちゃったけど、もっかい、しよ?」
 想像してちょっと元気になった息子が、申し出を聞いて待ってましたと反応しやがる……
「えへへ……大好きだよ」
 頬にまた口づけ。まあなんだ……色々、ホント色々あったしこれからもあるけど……幸せだから、いいか。

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