「へぇ……なんかすごぉい!」
目を輝かせ、不定形の身体を震わせながら、店員さんが好奇心と感動を織り交ぜた声を上げている。
んー……凄いのかしらね? 私としてはちょっと恥ずかしい、「若気の至り」だから……なんともねぇ。
私は行きつけの「薬屋さん」のカウンターで、私が愛しのダーリンと出会ったときのなれそめを話していた。なんでこんな話をすることになったのか、もう忘れてしまったけど……店員であるスライムさんは、なんかえらく興奮しているわ。
「でもあれですよね? 旦那さんがそんなに夢中になったのって、魅了の魔法か何かを使ったからですよね?」
「それがねぇ……」
確かにそのつもりだったし、事実そうしたつもりだった。あの時私は、「捕食」の為にたまたま目にした男の人……ダーリンに魅了の魔法を掛けたはずだった。けれど、後から知ったことなんだけど……魔法は「かかり」がかなり弱かったみたいで、あまり効いてなかったらしい。効果としては、「怪しい痴女を疑わずに近づける」程度かな? つまりは……出会いのきっかけ作りくらいの効果でしかなかった。
「それって……旦那さんも奥さんも、最初からラブラブだったってことですか?」
「そうなるのかしらねぇ……」
「うわぁ、すっごぉい! 素敵ですねぇ」
素敵……そうね、確かに素敵な出会いだったかも。夜が明けるまで愛し合って、ダーリンから「嫁にくれ!」って言われたときは感動しちゃったし……まあでも、こんな話を第三者が「感動」って言えるかどうかは疑問なんだけどね。
「いいなぁ……私にも、パパが「嫁にクレ」って言ってくれないかなぁ」
「先生は難しいんじゃないかなぁ……」
あの先生、本当にモテるものねぇ。
そういえば、あの時も先生に色々フォローして貰ったんだっけ。勝手に捕食していたことは怒られたけど、彼との結婚やそれに伴う引っ越しやら生活環境の整備とか……色々、やってもらったっけ。
「そうだ! パパが私に夢中になるような、とびきりの媚薬をまたママに教えて貰おうっと」
「媚薬は……気をつけてよ」
この娘の作る媚薬は……強烈だから。でもそれがその……。
「あっ、奥さんの分もちゃんと用意してあげますよ。とりあえず、これ今週分です」
「いつもありがとうね」
そう、これすっごく効くのよね……私も旦那様も、夢中になっちゃうくらい。
「でも本当は、これいらないんじゃないですか? ラブラブみたいだしぃ」
「うふふ……それはそれなのよ」
確かに、媚薬なんかに頼る必要はないんだけど……これはもう、「種」としての性なのかしらね? 愛に強欲なのよ。
「じゃあ、あなたもがんばってね」
「はーい、今夜もいっぱい楽しんでくださいねぇ!」
さぁて、今日はどんな感じにしようかしら……そうねぇ、なんか今日は、初心に返ってあの公園で……ええ、それがいいわ。早速準備しなくっちゃ。私はそそくさと、家路を急いだ。まだ日は頂点に達していない早い時間なのに、私は月が昇る頃の準備を始めようとしていた。