私なりの愛し方〜ろくろ首2〜

 今日、部内で営業成績の発表があった。
 私と主任のコンビは、今月トップ。
 これはとても喜ばしい事。なので、二人きりでお祝いがしたいと思っても、どこに問題があるでしょうか?
「あるとすればだ……」
 主任が腰を下ろしながら私に向かい、言葉を放つ。
「まだ勤務時間内だ。祝い事は5時を過ぎてからで良いはずだ」
 確かに。私とした事が軽率だった。でも、抑えられないこの気持ちを、主任には判って欲しい。
「それとな……」
 溜息混じりに、主任が漏らした。
「いつから、ラブホテルが営業先になったんだ?」
 いそいそと服を脱ぎ始めていた私の手が止まる。
「やだなぁ主任。ラブホテルで営業なんてしませんよぉ」
 私の作り笑いを受け、主任は頭をかき溜息を又漏らした。
「営業周りをして、今日は直帰、という事になっているはずだがね。そんな俺達がどうしてここにいるのかな?」
 呆れ顔の主任も可愛い。なんて思いながら、私は当然のように言う。
「極めてOLやサラリーマンにありがちな、サボりの口実を利用したからじゃないですか?」
 悪びれもなく言い放つ私に、主任はがくりと肩を落とした。
 生真面目な主任には、営業を口実に仕事をサボるなんて、進んでするタイプではないだろう。それだけに、勤務時間にラブホテルに入るなんて行為に抵抗があるのは判る。
 主任でなくても、普通の感覚であれば抵抗あるでしょう。それは私も重々承知している。普段なら、私だってこんな事はしない。
 普段からこんな事をしていたら、トップの成績なんて維持できない。
 そう、営業トップという成績は伊達で取れるものではない。
 私と主任が、足を使って周り、頭を使ってアイデアを絞ってきた成果。その成果が、今日トップの成績として発表された。その事に私は純粋な喜びを感じている。
 主任と二人で勝ち取った成果。
 主任と二人で……二人で……
 そんな思いにふけっていたら、いつの間にか足はラブホテルに向いていた。
「まあまあ、今日くらいは大目に見て下さいよぉ。ね?」
 私は主任のネクタイを緩めながら、軽くキス。そして潤んだ瞳で甘えてみせた。
「……まあ、入ってから言う事じゃないしな」
 なんだかんだと言いながらも、ホテルの前でごねることなくすんなりと入室した主任は、半分は「その気」だったのだと思う。
 生真面目でも、緩すぎず、固すぎず。そんな主任の性格に、私は惚れている。
 たぶん、主任も途中から「こんな事」になるんじゃないかと予測していたと思う。だから「とりあえず」愚痴りはするけど、反対はしない。
 主任と付き合うようになって、主任に「本当の私」を見せるようになってから、それなりに長い歳月を重ねてきた。主任も私の性格を読めるようになっているよう。
「今日発表があったからなぁ……こーなるとは思ってたよ」
 ほらね。やっぱり主任は私の事を判ってる。
 私は自分の性格を羞恥心もなく言い表すなら、「淫乱」の一言で片づけられると自分でも思っている。
 四六時中、私は頭の片隅で主任と肌を合わせる事ばかりを考えている。
 とはいえ、片隅でそんな事を考えながらも、私はちゃんと仕事の事とかその他色々きちんと考慮している。どんなに下から「よだれ」を垂らしていても、理性は保ち今すべきかどうかの判断くらいはキチンとしている。
 だから私は、今日ならばキャリアウーマンを休業しても構わないだろうと判断し、主任は私がそうするだろう事を予感していた。
「こうして、平日の昼間から上司とラブホテルだなんて……このシチュエーションでやってみたかったのよねぇ」
 ネクタイをほどき、シャツを脱がせた手で、私はじゅるりと自分のよだれを拭いた。
 私の言動に、またも呆れる主任。
「それに今日は、こんなところじゃないと出来ない「プレイ」をしようと思ってるんですよ、主任。うふふ、楽しみにしててくださいね」
 今日の日の為に、このホテルも事前からチェックしていた。そして必要な「小道具」がここに完備されているのもチェック済み。
 私は期待に胸膨らませ、股間をぬらせ、主任の股間を膨らませながら、悦に入っていた。

 私が選んだラブホテルのこの部屋は、浴室がとても広い。
 そして「スケベ椅子」はもちろん、「マット」等も完備している。
 この部屋は恋人同士が「ソープごっこ」を楽しめるようにと完備された部屋。
「やけに手慣れてるな……」
 私はこの部屋に用意されている小道具の一つ、「ローション」の原液を風呂桶へお湯と一緒に注ぎ、バシャバシャと両手でかき回している。
「知りませんでした? 私、昼はOLやりながら、夜はソープ嬢やってるんですよ?」
 驚く主任の顔を楽しんだ後、私は嘘ですよと舌を出した。
「でもソープに務めている友達がいるんですよ。その子から色々と教わったりもしてるので」
 実はこのホテルも、その友人から紹介された。ここはその友人が務めているソープのオーナーが経営しているホテルなのだとか。
「これでOK。主任、ちょっと塗るのを手伝ってくれませんか?」
 まるでサンオイルを背中に揺るのをお願いするかのように、私からは気軽な、主任からはドキマギするようなお願いをする。
 しかし、塗る場所はありがちな背中でも、主任が色々と想像している場所でもない。
「今伸ばしますから、「首全体」に塗って下さい」
 言い終えるのも待たずに、私はにゅるりと首を伸ばした。
 身長の三倍は首を伸ばす私。ここにローションを塗るのは、一人では大変だ。
 何をする気なのか、まだ主任は予測できないようだが、言われたとおり素直にローションを塗るのを手伝ってくれている。
「んー、桶一杯じゃ足りないみたいですね」
 私は主任に塗るのを任せ、もう一杯ローションを準備する。
 念のために、空になった桶にももう一度ローションを準備し、どうにか首全体に塗り終えた。
「こんなもんかな? じゃ主任、「起立」の姿勢で立っていて下さいね」
 主任は言われた通りビシッと直立で立ち待ってくれている。
 私は主任に、「足下」から近づいた。
「うお、これは……」
 巨大なアナコンダが人間に巻き付く、映画で見るようなワンシーン。
 私はそれを再現するかのように、主任の足下からグルグルと私の首を巻き付けていく。
 ローションを塗った首は主任の肌を滑らかに走り、するすると巻き付いていった。
「どうです? 気持ち良くないですか?」
 巻き付いた首の先端。私は自分の顔を主任の顔に近づけ尋ねた。
「ぬるぬるした感触がなんか……」
 気持ち良いのか悪いのか。答えは言葉ではなく、高揚した顔と、首の隙間から飛び出した「私のごちそう」が示してくれた。
「うふふふ、全身首ズリプレイ。悦んで貰えてるみたいですね」
 ソープによくある、ローションを塗った胸を男性の身体にこすりつける、あのプレイ。
 それを私は、長い首でやってみた。
 しかも私の首は長い。一部だけの刺激にしかならない胸でのプレイに対して、
 私なら全身を包んであげられる。
 私だから出来るプレイ。これを私は、ずっとずっとやってみたかった。
「なんか、巨大な主任の肉棒を首でしごいてるみたい……」
 恥ずがしげも無く淫語を口にしながら、私も興奮してきた。
 首に力を入れ、緩め、少し進めては、戻る。
 ただ巻き付くだけではなく、ローションで滑る首を使い、主任自身を全て愛撫するかのように動かしていく。
 なんていやらしい光景だろう。
 私は自分の行為を客観的にながめながら、このいやらしいプレイに興奮していた。
 全身を愛撫されている主任もそうだが、私も首全体に適度な刺激が加わりこそばゆい快楽を得ている。
「主任……んっ……」
 傍観していた私はたまらず、唇と舌を、唇と舌で求めた。
「んちゅ、ん、主任……ん、あっ、くちゅ……」
 激しく動く主任の舌が、私の首のように、私の舌に絡みつく。負けじと、私の舌も主任の舌へ絡みつく。
 舌だけでも、まるで激しく抱き合うように情熱的。
 そんな熱い舌の抱擁に、私は一時別れを告げた。
 私の舌が求める。もっと熱くて「美味しい」ものをと。
「くっ、この状況でそれは反そ……うおっ!」
 首の隙間から飛び出している、私の大好物。
 首と首の間に挟まれているそれは、首が動く度に身体と同じように擦られ刺激されている。
 これだけでも、ちょっとした「手淫」ならぬ「首淫」。
 その上で私は、こすりつける首の先端にある頭を下ろし、ガチガチに固くなった大好物を口に入れた。
「う、ちゅ……ちゅぱっ、ん、おいひ……ん、くちゅ、んん、ちゅ……」
 首淫と口淫のダブル攻撃に、主任は声にならない歓喜と悲鳴を叫んでいる。
 そして長い長い首の下、本体は大きく足を広げ腰を下ろし、
 ぐちゃぐちゃとこちらまで聞こえてくるような音を立てながら「手淫」している。
 私も主任も、まさに全身で愛撫し愛撫されている。
 普通では考えられないプレイに、二人は酔いしれ、行き着く先へと一気に走り出した。
「もう、くっ!」
「私も、もう、あっ……ん!」
 私の手が「潮」でびたびたになるのと、主任が私の「甘露」を吐き出すのは、ほとんど同じタイミング。
 一緒に逝けた。ただそれだけでも心が「逝ける」気がする。
「おいし……ん、ちゅ……」
 一滴たりとこぼすものかと、私は必至に吸い付いた。
 綺麗に好物を舐めているうちに、一度はしぼんだそれは、すぐにムクムクと大きく、固くなっていく。
「今日はいいよ、お祝いだ。もう一回いいぞ」
 私の首に巻き付かれたまま、主任が嬉しい許可をくれた。
 その嬉しさに私は、また首をぬるぬると動かし始めた。
「ちょっ、なんだ、今日はこのまま?」
 口に出したら、次はもう一方の口へ。そう思っていたであろう主任は、まだ首から解放しない私に疑問を感じたらしい。
「このまま、させて下さい。なんだかこれ、気に入っちゃって……」
 私だから出来る事。それで主任が悦んでくれる。
 そこに、私は幸せを感じてしまった。
 快楽とは離れていそうで、直結していそうな、幸せという感情。
 ろくろ首に産まれて良かった。そう感じさせてくれる、幸せ。
 それを与えてくれる主任。私はこのまま、この幸せと快楽を共有したかった。
 床に腰を下ろしていた本体を立ち上がらせ、主任に近づける。
 好物を挟んでいた首と首の隙間を大きく広げ、私は本体の腰をそこへ近づけた。
「あはぁ!」
 ずぶ濡れの陰門は、あっさりと好物を飲み込んだ。
 私は私の首に巻かれた主任を抱きしめながら、立ったまま腰を激しく動かす。
 主任も、私の首に巻かれ不自由ながら、懸命に腰を動かしてくれる。
 ローションを塗られた私の首が、私の胸や腹,太股にもあたる。
 そして、主任の全身を愛撫する為に動かしているその首は、同時に私の身体も愛撫するかのようになで動く。
「これ、すごい、きもちいい、わたしまで、あ、すご、あはっ、ん!」
 滑る首が胸に刺激を与え、柔らかな胸が首に刺激を与える。
 新しいオナニーのやり方を発見してしまったような、そんな感じさえしている。
「しゅ、しゅにん、きもち、いい、です、か?」
 でも、これは私の自慰ではない。主任との性行。
 主任あっての快楽。主任無しでは得られない快楽。
「いいよ、気持ちいいよ……こんなの、始めて、だよ……」
 主任が悦んでくれている。それが私にとって一番の快楽。
「しゅにん、しゅにん……いい、わたしも、きもち、いいの! いく、いっちゃうよ!」
 もっと長く、主任と抱き合っていたい。
 しかし終わりは近づいている。最高の快楽へと登り詰めながら。
「いっ、あっ、いくっ! い、い、あっ、いっ、くぅ!」
 動かし続けた二人の腰と、私の長い首。その動きが止まった。
 代わりに、ドクドクと私の中へと流れ出る白濁液と、それを搾り取ろうとする内ヒダ。
 私はしばらく首で主任を抱きしめながら、快楽と幸福の余韻を楽しんでいた。

「あれ? それ着けてたっけ?」
 少し早めの夕食を二人で取りながら、主任が私の指をフォークで指し示した。
 フォークの先には、指輪が輝いていた。
「着けてましたよ? ホテルを出た時から」
 誇らしげに、私は指輪を着けた手をかざし主任に見せた。指輪はもちろん、主任から頂いた「三ヶ月分」の指輪。
「勤務中は外してますけどね。それ以外では服を脱ぐ時ぐらいですよ、外すのは」
 笑顔で答える私を、主任ははにかみながら見つめていた。
 いやぁん、恥ずかしがる主任も可愛い!
「……ああ、でもそうなると、ほとんどの時間外してるな。仕事してない時は服脱ぎっぱなしが多いだろ、キミは」
 つまり、勤務外はエッチばかりしていると言いたいらしい……否定できない自分がちょっと悲しい。
「だからぁ、その短い時間だけでもこれを身につけて、「幸せの時間」を満喫したいじゃないですかぁ」
 あ、また照れてる。私の「歯も浮く恥ずかし攻撃」が効いたようだ。
「……今は約束だけで幸せです。ゆっくり、「責任」を果たしてくれれば、私は何時までも待ちますから」
 むしろ、急いで幸せの絶頂を手にするより、ゆっくりと幸せを長く味わっていたい。
 焦る事はない。主任なら、私を幸せにしてくれるから。
「ところで主任。この後どうしますか?」
 照れている主任を見ていると、私の中で沸々と感情が沸き立って来てしまう。
 抱きしめたい。長い首でぎゅっと抱きしめたい!
「言っておくが、今日はもうダメだからな」
 見抜かれてる。さすがは私のダーリン。
「まぁでも……その、なんだ……明日は休みだし、家に、来るか?」
 はしゃぎたい気持ちをぐっと堪えながら、私は笑顔で主任の提案に答えた。
 やっぱり、今夜は主任を抱きしめる!首でぎゅっと!
 エッチな事は無しでも良い。これが私の愛し方。
 私は私にしか出来ない、私にしかない幸せを、主任と掴むんだ。

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