第29話「ご用心!ジュースに潜む甘い罠」 ある日、プレキャラ5が連れ立ってでかけると、駅前では大きな人だかりが出来ていた。 輪の中心にいるのは、新発売のジュース「ドロリ濃厚ソーダIn-Run」の宣伝と謳い、試飲品を配って回る怪しげな集団。 マスクとサングラスをして顔を隠している癖に、背中には小悪魔風の羽根を生やした露出度の高い衣装というチグハグな格好をした女の子達が愛想を振りまいている。 キャンペーンガール達の格好も凄かったが、さらに凄いのは新発売の商品だった。 離れているプレキャラ5の元まで届くほど強い、下水とドリアンが混ざったような香り。 曰く言いがたい強烈な香りではあるが、不思議と人の心を惹きつける。試飲品に群れる人々の列が無くなる事は無かった。 しばらくして、不意に行方不明になっては虫の息になるまで精液を搾り取られた姿で発見されるという奇妙な事件が続けざまに起こる。そして被害者はすべて試飲されていたジュースを飲んだ男性だった。 インラーン帝国のスライム怪人の一人、バブルスライム。泡姫の異名を持つ「バブリー・バーバラ」の魔の手が忍び寄る。 四苦八苦した捜査の末に、なんとか試飲ジュースを手に入れたプレキャラ5は、それを注意深く基地に持ち帰り、検査機にかけた。 その結果、恐ろしい事実が判明する。 試飲品として配られていたジュースには、強力な催淫性と依存性を持つバブルスライムの体液が混ざっていたのである。 しかも催淫性によって昂ぶった欲求の矛先は、けして周囲の人間には向かず、体液を分泌したバブルスライム本人へと向く。 その危険な体液をひとたび摂取すると、人間はバブルスライムの下僕と化し、彼女と交わりたくてどうしようもなくなってしまうのだ。 下僕になった人間は匂いを頼りにバブルスライムの元へと誘われ、半ば取り込むようにして下僕の顔面に跨ったバブルスライムから体液を直接飲まされる。生で飲まされる催淫液に獲物は思考も理性も溶かされて、しまいには彼女の半液体状の身体にペニスを挿し込んでは精液を注ぎ続けるだけの存在と成り果ててしまう。 そうして人間から精気を搾り取ったバブルスライムは、自分の秘裂からさらに体液を分泌させては下僕化ジュースを量産していく。 すべては、新製品と称するジュースにバブルスライムの分泌液を混入させ、飲んだ男をインラーン帝国の下僕にしようとする人間奴隷化計画だったのだ。 人を虜にする危険なラブジュース。 その供給源であるバブルスライムを倒さなくては、どんどん被害は広がっていくだろう。 探知機で空気中に残るバブルスライムの匂いの残滓を辿り、ついにプレキャラ5は敵の隠れる前進基地を探し出した。 だるそうに警備をする戦闘員達を黙らせて、プレキャラ5は密かに潜入していく。 アジトの最奥。そこでは、今まさに狂演が繰り広げられている真っ最中だった。 人の輪の中心で宴を主催するのは、バブルスライム。 列席するのは、招待された客にして哀れな獲物の男性達。 パーティを彩る音楽は、老いから若いまで雑多な男どものあげる蕩けた呻き声と、淫らに響く粘りつくような水音だ。 気だるげな笑みを浮かべるバブルスライムを男達が取り囲み、透き通った緑色をした彼女の肢体のそこかしこに好き勝手に肉棒を突き込んでいる。 半流体のスライムに、人間の臓器の概念など無意味な物だ。 柔らかな肌を突き抜け、粘液で満たされたバブルスライムの体内に肉棒を挿入すれば、どこであろうがソコが極上の性器と化す。 バブルスライムの愛液の虜となった人達は、至福の表情に顔を歪めては、ありとあらゆる箇所から彼女のナカに精を放っていた。 おそらくは寝食を忘れて、いや、忘れさせられてバブルスライムと交じっているのだろう。 放出の震えと共に倒れる男もチラホラといる。だが周囲の人間はそんな事に構いもせず、むしろ少しでも自分がバブルスライムに近づこうと、倒れた体を押し退けて輪の外に放り出す。 おぞましい宴を、プレキャラ5が遮った。 予期せぬ出来事にも揺るがない、バブルスライムの気だるげな笑み。彼女はそこに嘲りを混ぜて、プレキャラ5を出迎えた。 バブルスライムの肌が、ふるるっと揺らぐ。 途端、彼女に肉棒を挿しいれていた男性達の口から異口同音に次々と短い悲鳴が上がる。が、それも一瞬。顔面をだらしなく歪め、阿呆のように口の端から涎を垂らして白目を剥く。 エネルギーである精液を存分に摂取したバブルスライムの満足げな吐息に、意識ごと一気に精液を搾り取られた被害者達がドサドサと倒れる音が重なった。 わざとプレキャラ5の神経を逆撫でする、明らかな宣戦布告。 プレキャラ5がジリッと距離を詰める。 ん、とバブルスライムが力む。 すると彼女の体内、ボディラインが溶け崩れているので分かりづらいが人で言えば尻たぶだろうと思われる辺りに、無数の小さな気泡が生まれた。 透明度の高いバブルスライムの体は、固唾を飲むプレキャラ5にその様子をつぶさに見せつける。 小さかった気泡は、バブルスライムの体内を肌に向かって浮上していくにつれて見る見るうちに大きく膨らんでいく。まるで風呂の中でオナラをした時のようだ。 オナラと違ったのは、流動性の高いバブルスライムの体が気泡を弾けさせなかった事だ。 ぽかりとバブルスライムの肌に浮かんだ泡は消える事無く、ドーム状から球状へと成長していく。泡は完全に球体になった時、ぷつりと生みの親から切り離されて、音も無く宙に浮いた。 小はゴルフボールサイズから、大はサッカーボールくらいまで。 透き通った球体があたり一面に漂う様子は、まるで子供が戯れにシャボン玉を盛大に撒き散らしたかのようだ。 バブルスライムの尻の谷間から、様々な寸法のシャボン玉がポコポコと産みだされる。 プレキャラ5が何かする間もあればこそ、彼らの周囲はバブルスライムと同じ色をしたシャボン玉で包囲されてしまっていた。 ある種、幻想的とも言える風景。 だが、その光景に浸る余裕はプレキャラ5には無い。風船はふわりと漂い、じりじりとプレキャラ5との距離を詰めていく。 いくら幻想的とは言え、これがバブルスライムの攻撃なのは明白。しかも触ればどうなるかは全くの不明な上に、包囲を掻い潜って逃げられる程、シャボン玉の弾幕は薄くない。 焦るあまり、レッドの周囲への注意が、ほんの少しではあったが緩んでしまった。 その隙を敵が見逃してくれる筈も無い。 するするとレッドの鼻先まで近寄る事に成功したシャボン玉が一つ。とっさに気付いたレッドに距離を取らせる暇もあればこそ。パチンと一人でに破裂。内部に詰まった内容物をぶち撒けた。 すなわち、エアロゾル化し、ミスト状になったバブルスライムの体液を。 効果は迅速、かつ劇的だった。 至近距離で弾けたバブルスライムの体液を吸い込んだレッドが、苦悶と共にがくりと膝をつく。 見ればレッドはいかにも苦しげな様子だが、病人が苦しがるような動きはしていない。普通ならば胸なり腹なりを押さえるだろうが、レッドはさらにその下の下腹部、ありていに言えば股間を押さえているのだ。 手の下では、レッドの一物がスーツを押し上げて見事にテントを張っている。 何もこんな時に欲情しなくても、と呆れるプレキャラ5。 呆れた空気の中、一人、攻撃をまともに喰らってしまったレッドだけが相対する敵の恐ろしさを思い知らされていた。 即効性の催淫液。それがバブルスライムの愛液が秘める力だ。 ほんの少し吸い込んだだけで効果はご覧のとおり。レッドの股間はビキビキに張り詰めている。 コンバットスーツの上からでも分かるほどに怒張した肉棒が、強靭な素材で出来たスーツに押さえつけられて男にしか分からない激痛を生んでいる。 実に情けない理由ではあるが、実効性はかなりの物だ。動けなくなるか、少なくとも動きを制限されて確実に戦闘力を減退させられる。今のレッドがいい例だろう。 獲物を動けなくした所に顔面騎乗で伸し掛かっては愛液を強制的に啜らせ、彼女の奴隷とするのがバブルスライムの戦法であった。 ひとたび奴隷となってしまえば、何も考える事無くありったけの精をバブルスライムに捧げて、全てが終わる。 一撃必殺の威力は無くとも、バブルスライムの催淫液は底無し沼のように足を絡め取る枷となり、最後は心も体も全て飲み込んでしまう。 敵の攻撃に、意識はしていないだろうが、青緑黄の三人の足が僅かに退いた。 彼ら三人は男性だ。悶えるレッドが受ける痛みと苦しみを知っている。 そんな三人を置いて、ピンクが飛び出した。 敵の武器は男性限定の催淫液の筈。自分ならば、という考えがピンクの頭の中にあった。 だがそれは早計に過ぎたと言えるだろう。 バブルスライムがにこやかに笑う。シャボン玉が弾ける。ピンクの足が止まる。ピンクの顔が引き攣る。ピンクの胎内が堰を切る。 見開かれた目と口と秘裂から、涙とはしたない嬌声とねばつく淫液を溢れさせて、ピンクが地面に崩れ落ちた。 無様にのたうちながら上げる声は、まさに雌と呼ぶに相応しい意味の無い音の羅列。 小水でも漏らしたかのように、あっという間にピンクのスーツの股間部分が黒く染みていく。小水ではない。全て彼女の秘裂の内側から爆発的に溢れ出したものだ。 濡れる漏れるというような生優しい勢いではない。まさしく決壊。 ピンクの誤算は一つだけ。 別にバブルスライムの愛液は男性だけに効果が限定される訳ではない、という点にあった。精液をエネルギーにするバブルスライムの体質と作戦上、効果を限定して分泌した愛液で男性のみを誘き寄せただけに過ぎない。やろうと思えば、試飲品を配った段階で街中を発情痴女だらけにしてしまう事も出来たのだ。 一瞬でレッドの肉棒を鉄のようにした催淫液を女性が摂取した場合、それは全身の皮膚感覚の感度を急激に引き上げるのだ。 いまやピンクの全身の皮膚全てが、剥き出しにされたクリトリスと同じかそれ以上の感度を備えていた。 戦いにおいて鉄壁に近い防御を備えた鎧ではあるものの、今度ばかりは彼女の身を守るスーツが仇となった。わずかでも体が動けば、スーツに擦りあげられた皮膚から快感が走る。思わず身を震わせれば、先に倍する媚電流が全身を揺さぶる。逃げ場のない自身のスーツが責め具と化して、ピンクの脳を快感で犯していく。 電撃のような快感に耐えてスーツを脱ごうと、ピンクは渾身の力と理性を振り絞る。が、それも、動いた拍子にスーツに触れた指先から腕と背筋を伝って走り抜ける甘い痺れに霧散させられる。代わりにピンクの腰がカクカクと激しく上下しては、ぷしゅっぷしゅっと絶頂の飛沫を撒き散らす。 まさに痴態と呼ぶにふさわしいイキ狂う絶頂地獄に終わりは見えない。 性感は新たな性感を呼び、意識を手放したくても脳に叩き込まれ続ける快楽がそれを許さない。 このままでは、いずれ精神を壊されてしまうだろう。 狂ったように甲高い嬌声を上げながら、床を愛液で濡らすピンクの姿がそれを確信させた。 あっという間にレッドとピンクをやられ、いまだ逆転の切っ掛けは掴めないと言うのにプレキャラ5に諦めの色は欠片も見えない。 この程度の苦境など何度も舐めてきた。 たかが二人やられた所でどうしたと言うのか。まだ、三人も残っているではないか。 最後の一人になろうともけして絶望に心を浸さず、どんなに幽かに見えようと希望の糸を手繰り寄せ、どこかの誰かの為に最善を求め行動する。それはとても苦しい事だ。だがヒーローは笑顔でそれを成そうとし、それ故に人は彼らをヒーローと呼ぶのだ。 そう、今、この時も。 敵はほんの数秒も走れば拳が届こうと言う場所にいる。 行く手を阻むのは、近づけば狂わされる魔淫のシャボン玉。 彼我の距離は無限に等しい。 何事かを行う上で問題がある。その問題の本質が見えているならば、話は半分片付いたも同然だ。なぜならば、後はどのようにすればよいか考えるだけなのだから。 道を阻む物がある。ならば、除ければいい。 除けようとすれば弾ける。ならば、弾けさせなければいい。 敵は柔らかく砕けそうに無い。ならば、砕けるようにすればいい。 ブルーの、グリーンの、イエローの、三つの視線が交錯する。 ほんの目配せ一つ。時間にして一瞬にも満たない刹那。 それで十分だった。 ブルーが凍らせる。 一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させる彼の魔力で、たちまちの内にシャボン玉の群れは宙に浮いたままでカチカチに凍りつかされた。 グリーンが吹き飛ばす。 凍りつき弾ける事が出来なくなったシャボン玉が、グリーンの発する突風に吹かれて、成す術無く押し退けられていく。 イエローが砕く。 シャボン玉の包囲網の中に出現した、プレキャラ5とバブルスライムを最短距離で結ぶ道をイエローが走る。 物理攻撃が通じないほどに粘性が低く液体に近いバブルスライムの肉体が、彼女に敗北を呼んだ。 ブルーの放った凍結魔法はバブルスライムまで及んでいた。 凍りつかされた肉体は粘性を失い、半ば以上まで固体にされていた。 驚愕と絶望に染まったバブルスライムの顔に、希望を繋ぐプレキャラ5の拳が突き刺さり、彼女もろともインラーン帝国の野望を木っ端微塵に打ち砕いた。 かくして、プレキャラ5の力によって、また一つの悪が滅びた。 しかしバブルスライムが倒された事で媚薬の効果こそ切れたものの、媚薬の所為で発情してしまった身体まで醒めはしなかった。 催淫液の作用で感度と性感を高められた、人の形をした雄と雌が一匹ずつ。あとの話は簡単だ。 まさにケダモノそのものと言った有り様で交じり合うレッドとピンクを放っておいて、プレキャラ5の三人はインラーン帝国の次なる魔の手に備えて休息を取るべく、帰途につくのであった。 頑張れ、プレキャラ5!インラーン帝国を倒すその日まで! 頑張れ、レッド!君の相手は一発や二発では満足しないぞ! 戦え、レッド!気をつけろ、レッド!先にへばると前立腺責められて強制勃起が待ってるぞ! バブルスライムの分泌液はインラーン帝国怪人にも効果がある為、彼女がプレキャラ5に倒されるまでは時々お仕置き役として登場。 作戦に失敗した面子がバブルスライムの体液入りジュースなどを飲まされた上で、Dr.ニートンが操るマニピュレーター群で羽箒責めにされたりする。 |